先延ばし癖は、ADHDの大きな悩みのタネです。
僕も何度も経験していますが、明らかに今すぐやった方がいいとわかりきっているのに、どうしても体が動かないんですよね。
その原因は報酬系の機能疾患。
めんどくさがりな性格で片付く問題ではなく、先延ばし癖もADHDによる症状のひとつです。
あなたはこんな悩みを抱えていませんか?
- 先延ばし癖がどうしても治らない
- 仕事に支障が出ている
- 友人との関係が悪くなっている
そんな悩みを解決します!
この記事では、「ADHDと報酬系について」解説。
最後まで読めば、先延ばし癖の根本的な原因を理解し、具体的な解決方法を知ることができます。
筆者の発達障害プロフィール
- 手帳3級のADHD
- ASD・APD・HSP傾向あり
- 社会人で発達障害が発覚
- 定型(健常者)にギリ擬態できる
- 一人暮らしは可能レベル
僕自身、ADHD特有の先延ばし癖を完全に克服したわけではありません。
しかし、対策によって”いくらかマシ”にはできます。
それでは、さっそく見ていきましょう!
目次
ADHDと報酬系について

ADHDによる脳の機能障害は、モチベーションを感じる報酬系にまで影響しているよ。
ADHDと報酬系について、次の内容を解説します。
- 報酬系とは
- 定型(健常者)と報酬系
- ADHDと報酬系
「先延ばしするのはやる気がないだけ」と思われがちですが、実はADHDが原因です。
本人がこの問題と向き合うとき、「先延ばし癖は仕方がないもの」と割り切ったほうがいいでしょう。
報酬系とは
報酬系とは、幸福・ポジティブ・快感などを感じる神経回路のグループです。
脳がそうした報酬(快楽)を認知することで、積極的に行動したり、目的を完遂させたりするモチベーションが生まれます。
要は目の前にぶら下がったニンジンですね。
会社では「評価される・給料が上がる・早く帰れる」などが報酬となり、バリバリ仕事をこなすことができるのです。
報酬系が働くことで、行動のモチベーションが生まれる。
定型(健常者)と報酬系
報酬系に異常がない定型は、「どのように行動するのが自分にとって得か(負担がないか)」を考え、その通りに自分を律することができます。
もちろんADHD同様、先延ばしにしたかったり、サボりたかったりする欲求はあります。
ですが「これ以上サボったらまずい」というラインを心得ていて、リスクは必ず回避できる。
適度に力を抜きながらも、要領よく行動して問題を起こさないのが定型です。
先延ばしにすることはあっても、リスクヘッジは欠かさない。
ADHDと報酬系
ADHDは報酬系の機能が低下しています。
どう行動するのがベストか頭で理解していても、「今すぐ楽になりたい!」という感覚がそれを受け付けません。
辛抱強く待つことができないので、衝動的に行動したり、注意を他のものにそらして気を紛らわらせたり(先延ばし)することがあります。
これが多動性や不注意によって現れるほか、やるべきことを平気で先延ばしにするなど、トラブルの原因になります。
長期目線で得られる報酬を正当に感じられず、手軽にすぐ得られるその場しのぎの報酬に目がくらんでしまう。
ADHDが報酬系関連で困ること

自分でも何とかしたいけど、どうしようもないんだ…。
ADHDが報酬系で困ることは、次の3つです。
- 先延ばし癖
- 目先の利益を優先
- 衝動的に行動する
本人は真剣に悩んでいるのに、周囲からしたら怠けているようにしか見えません。
仮に頑張って改善しても、あくまで人並みになっただけなので、それが評価されることはない。
改善の労力に加えて達成感が薄いのも、問題に拍車をかけています。
先延ばし癖
難しい課題を目の前にしたとき、「今すぐ片づける」「先延ばしにして今楽をする」の二択が生まれます。
定型もADHDも、今すぐ片づける方が期限的にも精神衛生的にも良いと判断できるのは同じです。
しかしADHDの場合、わかりやすい「今この瞬間」の感情を優先させるので、先延ばしにしてしまうのです。
期限ギリギリになってやっと重い腰を上げますが、過集中によって乗り切ってしまうことも多いので、味を占めて同じことを繰り返します。
長期的なメリットやデメリットは実感しにくい。
集中力が続かない
報酬系の弱いADHDは、頻繁に報酬を与えられなければ集中力が続きません。
定型は報酬が期待される状態に報酬系が活発化するのに対し、ADHDは報酬を受け取った瞬間に報酬系が活発化します。
定型は報酬獲得を目標にすること自体をエネルギーに変えられますが、ADHDは報酬を得なければエネルギーが生まれません。
そのため、目標達成に向けてコツコツ頑張ることが困難で、容易に報酬が得られない作業に集中できないのです。
適度に報酬系を刺激しないと、集中力が持続しない。
衝動的に行動する
ADHDといえば「衝動性」ですが、この移り気な性質にも報酬系が関係しています。
手軽に楽に報酬が手に入る選択肢を選びたくなるので、優先順位が常に上書きされてしまうのです。
期限や重要度、長期的なメリットにデメリットなど、本来考慮すべきことをすっ飛ばして決断してしまう。
僕にも経験がありますが、頭でわかっていても止められないんですよね…。
手軽な成果を得たいがために、衝動性が発動する。
ADHDの報酬系関連の対策

どんなに気をつけようとしても、自分の力じゃ治らないよ…。
ADHDの報酬系関連の対策は、次の6つです。
- 設備投資
- 作業のルーティン化
- マイルールを決める
- 困難は分割せよ
- 向かないことは避ける
- 薬を服用する
報酬系に関しては脳の機能障害なので、完全に克服することは不可能。
視覚障害の方が杖を使うように、発達障害者にも杖となる習慣や知識が必要です。
設備投資
発達障害者だと、はじめの一歩が憂鬱な作業などもはや達成不可能です。
「とりあえずYouTube見てから始めるか…」なんて先延ばしにしますが、どんどんハードルが上がり、結局ギリギリになるまで行動できません。
そこで、「テンションが上がるもの」「自分を楽にするもの」には積極的に投資してください。
- スーツやカバン→着替えのハードルが下がる
- スケジュール帳→チェックとメモの習慣化
- ドラム式洗濯機→洗濯の圧倒的簡略化
- 外食→家事の手間を無くして時短
意識レベルの対策では、もうどうにもなりません。
仕組み自体を変えて、やる気スイッチをたくさん用意しましょう。
成果は見えずらいが、ケチらず最大限に自分を甘やかそう。
作業のルーティン化
発達障害者はワーキングメモリが低いので、できるだけ脳に負担をかけないようにしましょう。
行動を決意する、やり方を確認する、計画を立てる…と毎回繰り返していると、作業がとても苦痛になります。
作業の手順や時間を固定すれば、流れ作業になるので心理的な負担が少ないです。
必要なものを事前に準備しておくなどして、自然と取り組めるように工夫しましょう。
徹底的に自動化し、大切なことに脳のリソースをあてよう。
マイルールを決める
「早くやるに越したことはないけど…」と、いつやるか悩んでいる時点で負けです。
例えば、「指示されたら10分だけ手を付ける」などのマイルールを決めておきましょう。
少しでも手を付けておけば、作業再開のハードルは思っているよりも低くなります。
一度習慣として定着してしまえば、発達障害のこだわりの強さと相まって強固なものになるでしょう。
関連記事:【大人の発達障害】ADHDの先延ばし対策【意志ではなくシステムで克服】
理屈抜きで「そういうルールだからやる」と決めてしまおう。
困難は分割せよ
哲学者デカルトの名言です。
作業内容が漠然としているとめんどくさく感じるので、具体的にリストアップしてみましょう。
そうすればひとつひとつのタスクのハードルは低くなるので、とっかかりやすくなります。
一気にまとめて終わらせようとする、発達障害特有の完璧主義を無くしましょう。
工程を細分化し、取り掛かりのハードルを下げるよう。
向かないことは避ける
発達障害者は特に、興味がない事に取り組むのが困難です。
会社員、それも下っ端のうちは仕事を選べないので仕方ありませんが、できるだけ向かないことは避けましょう。
どうしてもやらざるを得ない場合は、どうせうまくいかないので怒られる覚悟だけ決めておきます。
大きなミスをやらかす可能性が高いので、こまめに上司へ報連相して、最低限のリスクヘッジをすればOKです。
できないことはどうあがいてもできないので、諦めよう。
薬を服用する
ADHDにはコンサータやストラテラという薬があります。
神経物質の伝達を補助する効果があり、薬によって劇的に改善する人もいます。
ちなみに僕はコンサータを服用していましたが、あまり効果がなかったので止めました。
効果がある人とない人がいるので、適性がなかった人は泣きましょう。
関連記事:コンサータは効果なし?ADHD当事者のレビューブログ
診断を受けないと薬は処方されないので注意。
ADHDと報酬系について まとめ

この記事では、ADHDと報酬系について解説。
最後にもう一度、ポイントをおさらいしましょう。
- 先延ばしや衝動性の原因は報酬系にある
- 最初の一歩のハードルをとことん下げる
- 意識ではなくシステムで改善する
他人から見ればサボっているようにしか見えませんが、これは深刻な精神疾患です。
とはいえ気合や道具で何とかなるものではないので、自分に合った対策を用意しなければなりません。
定型(健常者)向けのライフハックは役に立たないことも多いので、参考程度にしておくとよいでしょう。
今の仕事ではどうしても改善できないなら、思い切って転職する他ありません。
おすすめの障害者雇用と退職代行サービスは、次の記事にまとめているので、ぜひご覧ください。