ADHD(多動性・注意欠陥障害)の適職を調べると、「営業」を毎回見ませんか?
ADHDの行動力を活かして、小さなミスを帳消しにするくらい成果を挙げられるとのことです。
しかし僕は、ADHDが必ずしも営業に向いているとは思いません。
なぜなら、ADHDで障害者手帳を持っている僕自身が、営業が向いていなくて退職したからです。
あなたはこんな悩みを抱えていませんか?
- ADHDで営業なのに成長する気配がない
- ADHDなのに一般的な特徴と違う
- ADHDの適職を知りたい
そんな悩みを解決します。
この記事では、「ADHDが営業向きとは限らない理由」を解説。
読み終われば、ADHDが営業向きとは限らない理由がわかり、本当の適職を探しやすくなります。
ADHDで障害者手帳を取得しており、広告代理店で営業をしていた僕が、ADHDが営業向きとは限らない理由を解説していきます!
目次
ADHDが営業に向いている理由


ADHDが営業に向いている理由は、主に3つです。
それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。
①コミュニケ―ションが好き
ADHDはコミュニケーション好きな人がいます。
衝動性があるため人の輪にためらわず加わることができ、思いついたままテンポよく会話できるのです。
僕の同級生に、ADHDで銀行の営業マンをしている人がいます。
彼も会話好きで、「事務作業は苦手だけど、お客さんとの会話はすごく楽しい」そうです。
コミュニケーション全般が好きなので、お客さんや社内スタッフと連携しながら仕事を進める営業は向いていると言えますね。
会話が好きなら営業にやりがいを感じられる!
行動力がある
ADHDは行動力があります。
行動力ではなく「衝動性」と言うべきかもしれませんね。
パッと思いついたらすぐに行動し、リスクの危険性があっても「まぁ何とかなるでしょ」とためらいません。
ときには周囲に迷惑をかけ、大失敗してしまうこともありますが、行動回数が多いぶんリターンも大きいです。
ネットに出てくるADHDの成功者は、たいていこの行動力によって結果を掴みとっていますね。
営業ならば「新規訪問」「テレアポ」で果敢に挑戦できるのが強みです。
衝動性が営業力につながる!
興味があることへの集中力が高い
ADHDは、興味があることへの集中力が高いです。
ADHDについて調べていると、「過集中」という言葉を目にしたことはありませんか?
過集中はADHD特有の症状で、周りの声や音が聞こえないくらい没入したり、頭の回転が一気に速くなったりするそうです。
(ちなみに僕はADHDですが過集中を経験したことがありません。笑)
営業では、過集中を次のように活かせます。
- 商談で臨機応変な提案ができる
- 台本なしで臨場感のあるプレゼンができる
- 独創的な企画が生まれる
- 作業スピードが速くなる
普段はミスが多くて要領が悪い人も、「ここぞ」という時に力を発揮するので、全体的な評価が高くなります。
過集中と営業の相性がいい!
ADHDが営業に向いていない理由


ADHDが営業に向いているのは、対人コミュニケーションや行動力、独創性が発揮できる部分においてです。
「多動性」がメリットとするならば、「注意欠陥」がデメリットということですね。
それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。
失言が多い
ADHDは失言が多いです。
コミュニケーションがうまくハマればいいですが、そうでない場合は「話がかみ合わない」「失礼なことを言う」「空気が読めない」などと思われてしまいます。
原因は、ワーキングメモリ(脳の処理能力)が小さいこと。
会話スピードの中で「適切な発言は何か」「この言葉の裏の意味は何だろう」「これは社交辞令かな?」などの判断ができず、会話がおぼつかないなんてことも。
僕も商談や上司との会話がとても苦手です。
言葉そのものを理解するのに必死で、どう返答したらいいかまで気が回らなくなってしまいます。
「何か発言しなきゃ」と思った一言が失礼だったりトンチンカンなものだったりするので、会話そのものが怖くなっていきました。
ちなみにADHDの「会話が好き」だと、自分の好きな話をお構いなくして、その場の雰囲気を悪くしているだけのケースもあります。
適切な言葉選びができず、相手を怒らせてしまうことも。
マルチタスクが苦手
ADHDはマルチタスクが苦手な傾向にあります。
- 優先順位がつけられない
- 集中の切り替えができない
- やるべきことが多くて忘れてしまう
- めんどくさくて先延ばしにする
これは”ADHDあるある”ですが、みなさんはいくつ当てはまりましたか?
僕はすべて当てはまっています。笑
一つの作業だけを集中してこなすなら大丈夫ですが、明確な期限が決まっていない仕事をいくつか抱え込むと、優先順位が分からなくてパニックに。
なんとか進めるも細かいミスを連発し、段々とめんどくさくなって期限ギリギリまで放置してしまうんですね。
原因は、先ほども出てきたワーキングメモリの小ささや、衝動性が高く集中力のムラが大きいためです。
こうした弱点を克服できるたけの成績をおさめていたら救いがありますが、そうでない場合は悲惨な評価を受けることになります。
発達障害が得意なのは、短期集中のシングルタスク
ケアレスミスが多い
ADHDはケアレスミスが非常に多いです。
ADHDの注意欠陥は「気をつけます」や「意識します」では絶対に直りません。
- 注意された事をすぐに忘れる
- メモを取ってもメモ自体なくす
- 勘違いや違和感に気が付かない
- 集中力が続かない
- プレッシャーに弱い
これらの理由から、ADHDはミスが一向に減らないのです。
また、営業の仕事はお客さんとの会話だけではありません。
- 社内スタッフとの連携
- スケジュール管理
- メール処理
- 経費処置
- 資料作成
…etc
こうした地味な作業もこなさなければならず、案件が増えるほどタスクは増えていきます。
どんなに気をつけても「ミスしやすい」という性質自体は治らないので、他の人からしたら「やる気がない」と思われてしまいがちに。
ケアレスミスが多いと社内外の人にも迷惑をかけ、会社へ居づらくなってしまいます。
僕も退職直前には「ミスするやつ」という認識が定着していて、仕事をお願いしようとすると嫌な顔をされるようになりました。
会社を辞める理由の第一位が「人間関係の悩み」というのもうなずけます。
営業は地味な事務作業も多い!
“ADHDの適職”が存在しない理由


ここまでADHDが営業に向く理由と向かない理由について説明してきました。
「じゃあ結局、ADHDは営業に向くの?向かないの?」
そう思われた方もいると思います。
結論は、「”ADHD”や”営業”で一括りにはできないので状況による」です。
「答えになっていないじゃないか!」と思われるかもしれませんが、実はADHDと言ってもいろいろなタイプがいて、単純に判断できないんです。
ここからは、「”ADHDの適職”が存在しない理由」について解説していきます。
それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。
同じADHDでも症状が違う
同じADHDでも、症状の強さや条件は人それぞれです。
ネットの診断を受けても、当てはまらない箇所が案外多かったりします。
僕の場合、注意欠陥の項目はよく当てはまっていましたが、「長時間座っていなければならない時に、手足をそわそわと動かす」といった多動性の項目はほぼ当てはまりません。
それに、職場で上司に怒られまくっているときと、ひとりで淡々と作業できているときでは症状の強さがまるで違います。
僕は「業務量と人との関りが少ない作業なら安定している」ADHDであり、「いつもせわしなく動いてテンパっている」ADHDとは性質が違います。
ですがどちらもADHDには変わりなく、現に僕もADHDで障害者手帳を取得しています。
人の性格に個性が出るように、ADHDの症状にも個性があります。
そのため、「ADHDの適職」ではなく「あなたの適職」を探していく必要があるのです。
複合型がある
発達障害の多くは、複数の症状が混ざってあらわれます。
僕自身、ADHDと診断されましたが、どちらかというとASD(自閉症スペクトラム障害)の症状が強く出ています。
たとえば、このような感じです。
- 言葉で表現するのが苦手
- 相手の気持ちがわからない
- 臨機応変に対応できない
- ひとりでいるのが好き
- 自己流で進めたがる
完全に社会不適合者のそれですが、僕はこんな人間です。笑
ASDには「マニュアルの固まっている作業系で力を発揮できる」のですが、僕にはADHDの「飽きっぽさ、注意欠陥」も同居しているため、ASDの強みが活きません。
逆に、ADHDが持っているはずの行動力も、ASDのマニュアルを好む性質により邪魔されています。
発達障害で突き抜けている人は少なく、このように特性同士が打ち消し合っている人が多いのです。
発達障害の症状にも個性があらわれる
職場の雰囲気にも左右される
発達障害の症状の出やすさは、職場の環境によっても変わります。
たとえば僕のADHD特性は、外出がなくて上司との連携も少ない日は安定していますが、商談に資料作成にテレアポに大忙しの日は、各段にミスが増えます。
たしかに忙しければ誰でもミスは起こりやすくなりますが、ADHDだとそれがずば抜けています。
それに僕の場合は、上司が威圧的ですぐにキレ散らかす人だったので、そのプレッシャーがあると頭が真っ白になって何もできなくなっていました。
体育会系の雰囲気の職場やパワハラ上司がいると、ADHDのパフォーマンスは明らかに下がります。
仮に業務内容が自分に合っていても、働く環境が適していなかったら、ADHDの症状は出やすくなるのです。
ADHDは”仕事内容”と”働く環境”の両方が大事
ADHDが営業向きとは限らない理由 まとめ

この記事では、「ADHDが営業向きとは限らない理由」について解説してきました。
もう一度、ポイントをおさらいします。
- 営業には事務・管理能力も必要
- 口下手なADHDもいる
- ADHDの症状には個人差がある
- 仕事内容だけではなく環境も大事
ADHDは誰もが「行動力があってコミュニケ―ションが得意」というわけではなく、むしろ営業適性がまったくないADHDも大勢います。
「ADHDは営業に向いているらしい」という理由で配置転換や転職をすると、痛い目を見るかもしれません。
大切なのは、ADHDの適職ではなく「あなたの適職」を見つけることです。
何が苦手で何ができるのかを見極めて、今の仕事での対策や転職活動に役立てていきましょう!
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