発達障害は職場の人間関係で悩むことが多いです。
仕事ができる人もできない人も、共通して苦労しているのが”雑談”ではないでしょうか。
僕自身、営業でありながら雑談が大の苦手で、「人並みに会話する」ことに多くの時間と労力をさいて対策してきました。
あなたはこんな悩みを抱えていませんか?
- 雑談ができなくて人間関係がよくない
- 飲み会やランチの時間が苦手
- 最低限のコミュニケーションをとれるようになりたい
そんな悩みを解決します。
この記事では、「発達障害が雑談を乗り切るコツ」を解説。
読み終われば、うまく雑談を乗り切るコツが身につき、会社でのストレスや疲れが軽くなります。
広告代理店の営業として3年間働いていた筆者が、発達障害でも雑談ができるようになるコツを解説していきます!
目次
発達障害が雑談で困ること


発達障害が雑談で困ることは、主に5つです。
これらはすべて僕が体験してきたことなので、詳しく解説していきます。
①目的のない雑談が苦手
発達障害は、目的やマニュアルのない会話が苦手です。
たとえば会議や電話対応ならば、話の内容や使う知識が限られていて、ゴールを明確にイメージできるので、ある程度はこなすことができます。
しかし雑談は目的もゴールもなく、ただその場で生まれた会話が宙をただよっている。
つかみどころがなくて何を話したらいいのかわからないし、なんとかその場をしのげても全然楽しくありません。
目的がハッキリしていない話は苦手だし楽しくない!
②話がかみ合わない
発達障害は話がかみ合わないことが多いです。
たとえば、「この前○○っていう映画見たんだけど、すごいおもしろかったよ」という話をされたとき、「映画ならAmazonプライムで無限に時間潰せるよね!」なんて返してしまいます。
相手は見た映画の話をしたいのに、自分は頭の中で「映画→Amazonプライム」という連想ゲームを始めてしまい、共通の話題と思い込んでしまうんですね。
結果、「あなたとは話がかみ合わない」「話してるとなんだが疲れる」と思われてしまうのです。
自分と相手の認識がズレてしまう
③なぜか相手を不愉快にさせる
発達障害は無意識に、相手に不快な思いをさせてしまいがちです。
たとえば、筋トレの話をしている人に「それ何のためにやってるんですか?」と言ったとします。
本人は「ダイエットなのか、スポーツのトレーニングなのか、目的は何ですか?」というニュアンスで聞いたつもりです。
しかし相手からしたら「そんなことして意味あるんですか?」とあおられたように受け取られかねません。
こうした食い違いが、人間関係のトラブルに発展してしまうのです。
相手に誤解されるような言い方をしてしまう
④大勢でのコミュニケーションが苦手
発達障害の多くは大勢でのコミュニケーションが苦手です。
何を話せばいいのか、どのタイミングで話せばいいのか、誰と話せばいいのか、全く分かりません。
1対1なら目の前の人にフルコミットできるのでまだ楽ですが、人が増えるほど会話は複雑になり、フリーズしてしまいます。
挙句に「大丈夫?楽しんでる?」なんて気を遣われた日には死にたくなりますね。
選択肢が多くて、複数人の会話に対処できない
⑤人の声だけ聞き取りづらい
発達障害のなかには、人の声だけ聞き取りづらいという人がいます。
聴力検査も問題ないのに、なぜか人の話し声だけが聞き取れないんです。
穴埋め問題のように一部だけが聞き取れないので、何回も聞き返してしまうんですね。
しだいに相手に申し訳なくなって、聞き返さずに内容を推測するか、愛想笑いでごまかすようになります。
でも絶対にボロが出るので、変な空気になったり、相手に誤解を与えたりしてしまいます。
会話そのものが聞き取れなくてストレス!
発達障害が雑談で困る原因


発達障害が雑談で困るのは、ちゃんとした原因があります。
これらを完全に克服するのはほぼ不可能ですが、原因がわかればある程度は対策することができます。
それぞれの原因について、詳しく見ていきましょう。
原因がわかれば対策もできる!
①目的意識が強い
発達障害、特にASD(自閉症スペクトラム障害)の人は、目的意識が強い傾向にあります。
目的のある会話じゃないとする意味がないし、それを楽しめる感性も理解できません。
僕はADHD(多動性・注意欠陥障害)ですが、おそらくASDの気質もあるので、その感覚はよくわかります。
そもそも用がない相手と何を話したらいいかわからない。せめて「話したいことマニュアル」でも渡してくれたらいいんですが。
雑談のような答えがない会話は本当に苦手です。
「会話=目的があるもの」という認識がある
②ワーキングメモリが小さい
発達障害の会話がかみ合わない原因の一つは、ワーキングメモリが小さいことです。
ワーキングメモリとは、心理学でいうところの「作業記憶、作動記憶」です。PCでいうCorei5みたいなやつです(たぶん)。
入ってきた情報に対して、どのように対応するのか、あるいは不要な情報として削除するのかを判断します。
このワーキングメモリが小さいと、会話のスピード感のなかで「相手はなにを伝えたいのか」「どう返答するのがよいか」という判断を瞬時にできなくなります。
その結果、自分の頭で処理できる範囲の情報にしか意識がいかなくなり、会話がかみ合わなくなってしまうのです。
会話がかみ合わないのは、情報処理が追い付いていないから。
③言葉の裏にある意味を読み取れない
発達障害は言葉の裏にある意味を読み取るのが苦手です。
例えば職場で「ちょっと寒くない?」と言われたら、それは「冷房の温度あげてほしいな…」というお願いですよね。
でも発達障害は「あーそうですね」という返答をするんです。相手からしたら冷たい人のように思われかねません。
このように相手の意図が読み取れないことで、印象が悪くなってしまうのです。
原因としては、何か言われたときに言葉だけを理解するのに必死で、「相手はなぜこの質問をしたのか」というところまで頭が回らないんですね。
特にテンポが速い会話のときや、緊張する相手と話しているときに起きやすいです。
また、共感力が小さいのも原因の一つです。
言葉の表面的な意味だけ読み取ってしまう
④中枢性統合が弱い
発達障害が大勢でのコミュニケーションを苦手とするのは、中枢性統合の弱さが原因の一つです。
中枢性統合とは「全体の情報を把握する能力」のことです。
中枢性統合が弱いと、目の前の情報へピンポイントに焦点を当ててしまい、全体的な流れが分からなくなってしまいます。
そのため、飲み会のような大勢が同時にコミュニケーションをする場所は特に向かいないです。
- 誰と話せばいいかわからない
- 話に入るタイミングがつかめない
- お酌や注文まで手が回らない
人数が増えるほどコミュニケーションがマルチタスクになっていくので、対応できないのです。
人が増えるほどコミュニケーションは複雑になる
⑤聴覚情報処理障害
発達障害が人の声を聞き取りづらいのは、聴覚情報処理障害(APD)のためです。
聴覚情報処理障害とは、聴力検査では問題ないのに、日常生活で人の話し声が聞き取りづらくなる症状です。発達障害による特性や心理的な問題が原因だと考えられています。
雑音があったり早口や小声で喋られたりすると、特に症状が出やすいです。
診断はもらっていませんが、僕も聴覚情報処理障害だと思います。
聞き取れないときは本当に聞き取れなくて、集中して3回聞き直してもダメだったときは本当に絶望しました。笑
こればかりは、どんなに対策しようと思っても無理ではないかと思います。
人の声だけ聞き取りづらい症状が存在する
発達障害が雑談を乗り切る5つのコツ


発達障害が雑談を乗り越えるコツについて、広告代理店で営業をしていた筆者が解説していきます。
発達障害が雑談を乗り越えるコツは、以下の5つです。
それでは、一つずつ確認していきましょう。
①雑談に目的を見出さない
ASDに人には特につらいですが、「会話に目的を見出すこと」はやめましょう。
例えばあなたが友達と話しているとき、どんな感じか振り返ってみてください。
「最近、大原優乃っていうグラビアアイドルにはまっててさ」「あーあの妖怪ウォッチ歌ってた子?」「そうそう!コンビニの雑誌で見かけるたびに、俺も妖怪になっちゃいそうだよ!」
ほら、何の目的も意味も生産性もないですよね。
発達障害は、あいまいなものを判断するのが苦手です。
雑談にはマニュアルも形式もないので、いざ「はい、好きにどうぞ!」状態になってしまうとフリーズします。
僕はそうした状況に備えて、「どうでもいい話リスト」をあらかじめiPhoneのメモに書いていました。
例えばこんな感じです。
- 節約のために自炊したいんですけど、いいレシピあります?
- タバコまた値上げしましたよね。そういえばいつから吸ってるんですか?
- 石原さとみ結婚したらしいですね。やっぱ超エリートしか無理ですよね
冷静に読んだら本当につまらない内容ですけど、実際に話してみたらその場のテンションで案外盛りあがったりしますよ。
目的のない会話に備えて、話題をメモしておこう!
②話を復唱して時間を稼ぐ
会話のときに相手が言ったことを復唱し、時間を稼ぐようにしましょう。
話がかみ合わないのは、発達障害のワーキングメモリが小さいため、正しい回答を導く処理が追い付かないからです。
それならば、無理やり発達障害のワーキングメモリに合わせた会話ペースにすれば、落ち着いた判断ができるようになります。
ビジネスや恋愛での会話テクニックに、「バックトラッキング」というものがあります。
相手の言葉をオウム返しすることで、「自分の話を聞いてくれる」という安心感をあたえ、距離を縮めることができるテクニックです。
例えば、上司が「おれ、大原優乃すきなんだよね」と言ってきたら、「へえ、大原優乃すきなんですね!」といった感じで答えます。これだけです。
発達障害の場合は、会話テクニックのためにバックトラックを使うのではなく、返答の時間を稼ぐために使っていきましょう。
仮に返答が思いつかなくても、だいたい相手の方から続きをしゃべりだすので、そうしたら「聞くモード」に入って楽になります。
テンポよく会話する必要はなし!
③訂正された後にフォローする
言葉の裏の意味が分からないのは、がんばっても克服は難しいです。
それならば、訂正された後のリアクションでフォローしましょう!
冷房の例でいくと、「この部屋寒くない?(冷房の温度上げてほしいな)」といわれた時に「あーそうですね」と答えたとします。
そこで「ちょっと冷房の温度上げてくるよ」と言われて初めて、「そういう意味だったのか!」と気付くことが多いです。
そのあとすぐに「あっ、そういう事だったんですね!すみませんシンプルに感想言ってました。笑」という具合で、フォローを入れましょう。
そうすれば、少なくとも悪気はないということは伝わりますし、「抜けてるけどなんか憎めないキャラ」を確立することもできます。
大切なのは空気が読めなかったその先!
④相槌だけ打っておく
大人数での会話が苦手な発達障害は、相槌だけ打っておくようにしましょう。
積極的に参加しようとすると事故になるし、かと言って下を向いていては相手に気を遣わせてしまう。
それならば、最低限の役割を満たしたまま大人しくしているのがいちばんです。
話の中心になっている人の方を見て頷き、周りの人と同じようにリアクションをとる。
飲み会ならば、頷きに集中しているぶん、お酌や注文にエネルギーを使うのもgoodです。
「我関せず」の雰囲気を出していると反感を買うので、そこだけ注意しておけば2時間くらいやり過ごせます!
会話に入るだけがコミュニケーションじゃない!
⑤聴覚情報処理障害は伝えておく
聴覚情報処理障害については、周りの人に伝えたほうがいいです。
これは対策することができず、完全に受け入れてもらうしかない症状だからです。
しかし急に「実は僕、聴覚情報処理障害なので話が聞き取りにくいんです」と言ったら、同僚は戸惑って扱いに困ってしまうでしょう。
ストレートに伝えるのではなく、「いや~耳が悪くて、雑音がひどいと人の声聞き取れないんですよね!」くらいのニュアンスで伝えたほうがやわらかくていいです。
正確には耳が悪いのではなく、脳機能や心理的な問題が原因なのですが、そんなことは同僚には関係ありませんからね。
聴覚情報処理障害だけでなく、発達障害に関するあらゆる特性は、”キャラ”にしてしまうと受け入れられやすくなります。
例えば僕はADHDで、ミスが絶えずいつも怒られています。
そこで「ミスは多いけど元気で素直な若手営業キャラ」を作るために、大声で挨拶して大嫌いな飲み会にも毎回参加するようにしました。
そうすると、業務外の時間では気さくに話しかけてもらえるようになり、なんとか人間関係は保つことができました。
発達障害に関することは”キャラ”として伝えてみよう
発達障害が雑談を乗り切るコツ まとめ

今記事では、「発達障害が雑談を乗り切るコツ」について解説してきました。
もう一度、ポイントをおさらいします。
- 会話に目的を見出さない
- 話を復唱して時間を稼ぐ
- 訂正された後にフォローする
- 相槌だけ打っておく
- 聴覚情報処理障害は伝えておく
発達障害がうまく雑談できないのは仕方ないことです。
雑談スキルをあげるよりも、最低限の準備やミスした後のフォローなどをがんばっていきましょう。
無理してコミュニケーションを取ろうとするのは本当につらいですよね。
できる範囲で、昨日よりも少しだけ人付き合いの疲れが軽くなったらヨシとしましょう!
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