僕は社会人になってから発達障害が発覚し、どうにもならずに退職。
今後は貧乏フリーランスorフリーターとして生きていきますが、”人並みの人生”というレールから外れたことに絶望しました。
そんな時に読んだのが、「コンビニ人間」という本です。
この本のあらすじは以下のとおり。
36歳未婚、彼氏なしでコンビニエンスストアのアルバイト歴18年目の主人公の生き方を通じて「普通」とは何かを問う。第155回芥川龍之介賞受賞作。
引用:Wikipedia
作中では言及されていませんが、主人公は発達障害者。
小さい頃から周囲との感覚のズレに困っていましたが、マニュアル人間化をよしとするコンビニバイトによって救われます。
周囲から異物扱いされて戸惑いながらも自分の世界で生きている主人公は、他人と比較して落ち込んでいる僕よりもよほど幸せそうです。
主人公と同じ感覚は持てませんが、少しでも生きやすくなるためのヒントは転がっています。
あなたはこんな悩みを抱えていませんか?
- 他人の目が気になって生きづらい
- 非正規雇用で働くのは恥ずかしい
- ”普通”になれない苦しみに共感したい
発達障害者なら思わず頷いてしまうシーンが盛りだくさんの「コンビニ人間」。
そこから学べることを解説していきます。
目次
【コンビニ人間】発達障害者はバイトに向いている

主人公は、子供の頃から他人との価値観の違いに悩まされていました。
小鳥が死んで友達が悲しんでいるのが理解できず、「せっかく死んでるんだから、焼き鳥にしよう!」と発言したり、手早く男の子同士の喧嘩を止めるためにシャベルで頭を殴ったりしています。
そんな主人公にとって、コンビニ店員は天職でした。
マニュアル化に順応しやすい
発達障害者(特にASD)はワーキングメモリが低いため、マニュアルが決まっている仕事に向く傾向にあります。
私はバックルームで見せられた見本のビデオや、トレーナーの見せてくれるお手本の真似をするのが得意だった。今まで、誰も私に、「これが普通の表情で、声の出し方だよ」と教えてくれたことはなかった。
『コンビニ人間 (文春文庫)』(村田 沙耶香 著)より
幼いころから”普通”の感覚が理解できなかった主人公にとって、あらゆることがマニュアル化されたコンビニは生きやすい場所です。
コンビニ店員としてなら社会の歯車になることができ、やりがいを感じています。
関連記事:【大人の発達障害】ワーキングメモリが低いと困ること
やるべきことが明確だと働きやすい
主人公は「コンビニの声が聞こえる」ため、商品の配置やホットスナックの補充など、的確な状況判断ができます。
”普通の感覚”がわからなくても、マニュアル化されたコンビニの世界では関係ありません。
コンビニでは、働くメンバーの一員であることが何よりも大切にされていて、こんなに複雑ではない。性別も年齢も国籍も関係なく、同じ制服を身に付ければ全員が「店員」という均等な存在だ。
『コンビニ人間 (文春文庫)』(村田 沙耶香 著)より
社内外で関わる人が多い営業のような仕事は、人間関係や立場、タイミングなど複雑な要素が多いので困難を極めます。
もし人間関係で困っているなら、いっそのことコミュニケーションが不要な仕事を探すのもありです。
【コンビニ人間】発達障害者は”普通”に適応するスキルが必要

主人公は、18年間コンビニ店員をしている人生に何の疑問も抱いていませんが、周囲から好奇の目で詮索されることが多々あります。
そのため、妹から「普通の感覚」「コンビニバイトを続けるもっともな理由」をレクチャーしてもらっています。
”普通”じゃないことには理由がいる
発達障害の知名度は上がってきましたが、各々に偏ったイメージがあるだけで、本当に理解している人は少数です。
「でも、変な人って思われると、変じゃないって自分のことを思っている人から、根掘り葉掘り聞かれるでしょう? その面倒を回避するには、言い訳があると便利だよ」
『コンビニ人間 (文春文庫)』(村田 沙耶香 著)より
主人公は持病で体が弱いことを外向けの理由としています。
定型(健常者)に発達障害を理解してもらう事は非常に困難なので、適当に説明するスキルは必要です。
普通であることを強いられる
発達障害の人は、仕事や人間関係で苦労している人がほとんど。
それは、定型が求める水準の仕事ができず、同じ価値基準の中でコミュニケーションが取れないからです。
正常な世界はとても強引だから、異物は静かに削除される。まっとうでない人間は処理されていく。そうか、だから治らなくてはならないんだ。治らないと、正常な人達に削除されるんだ。家族がどうしてあんなに私を治そうとしてくれているのか、やっとわかったような気がした。
『コンビニ人間 (文春文庫)』(村田 沙耶香 著)より
主人公は、他人の感覚や価値観が全く理解できません。
しかし普通の人として振舞わなければ都合が悪いので、設定を作り上げ”普通”を演じています。
【コンビニ人間】発達障害者が社会で生きるヒント

主人公は、周囲が”普通”ではない自分を否定するのを面倒にこそ思いはしても、そこに葛藤はありません。
適職を見つけ、最低限は周囲に適応できれば、満足のいく生活ができるようになるかもしれないですね。
人手不足の業界を選ぶ
バイトにしろ正社員にしろ、人手不足の業界を選ぶという戦略もあります。
発達障害者は仕事で成果をあげることが難しいので、「いないよりはマシ」と思われる業界にいたほうが有利です。
人手不足のコンビニでは、「可もなく不可もなく、とにかく店員として店に存在する」ということがとても喜ばれることがある。私は泉さんや菅原さんに比べると優秀な店員ではないが、無遅刻無欠勤でとにかく毎日来るということだけは誰にも負けないため、良い部品として扱われていた。
『コンビニ人間 (文春文庫)』(村田 沙耶香 著)より
特定の能力に秀でていて、それで貢献できるなら言うことはありません。
しかし、どれだけ本人にやる気があっても、同僚が見てくれるのは結果だけ。
それなら、自分の価値が高くなる環境で働いたほうが得です。
自分らしさは捨てる
よく「自分らしさが大事」なんて言われますが、発達障害者がそれを真に受けると、ろくなことがありません。
「自分らしさ」の枠はある程度決まっていて、そこからはみ出る「自分らしさ」は必要とされません。
「つまり、皆の中にある『普通の人間』という架空の生き物を演じるんです。あのコンビニエンスストアで、全員が『店員』という架空の生き物を演じているのと同じです
『コンビニ人間 (文春文庫)』(村田 沙耶香 著)より
誰からも必要とされない個性なら、それはないに越したことはありません。
社会人として円滑な人間関係を作っていきたいなら、主人公のように”別人格を演じる”と割り切るといいでしょう。
コンビニ人間 まとめ

この記事では、「コンビニ人間」から学べることを解説。
最後にもう一度、ポイントをおさらいしましょう。
- 発達障害者はバイトに向いている
- 発達障害者は”普通”に適応するスキルが必要
- 人手不足の業界なら自分の価値が上がる
コンビニ人間は純文学が対象の芥川賞受賞作ですが、とても読みやすい内容です。
普段本を読まない人でも、気軽に手に取ってみてください。
途中、「男性発達障害被害者の会代表」みたいな男が現れますが、彼の一見身勝手そうな言動にも、深く共感できます。
よく「発達障害の個性を活かす」なんて言われますが、一方でコンビニ人間では身の丈に合った発達障害者の生活が描かれています。
下手な教本よりも参考にできる事が多いので、趣味&実用の両面からおすすめです。